登攀チーム ひも野郎

傾山二つ坊主南壁を登るために集まった変わり者たちの記録

傾山 二ツ坊主南壁登攀 前半戦の記録  ~第2話 離陸~

第2話 離陸

偵察と0ピッチ目 2022年4月23日  メンバー 片山/折口

前回偵察の記憶も随分曖昧になっているので、まずはもう一度偵察に行こうと九折登山口へと車を走らせる。

 

今回は前回の偵察で目星をつけていたチムニー上の壁を見るため、1ピッチの試登する予定だ。そのため、背中にはロープ3本とありったけのプロテクションとボルトセット。ザックは各25Kgくらいか。

観音滝から林道へ出て林道と山手本谷が出会う橋までダラダラと歩く。この時点で時折小雨がぱらつき、中止が頭をよぎる。しかし、明日は本降り予報で既に中止を決定しており、今日をのがすと次は本気トライ予定の5月8日になってしまう。時間の足りないこの頃だ。多少降られても今日は行っておきたい。

 

道中雨粒が顔を濡らす。相棒はすでに諦めモード。汗だと言い張ると、正常正バイアスだと返された。雨の中南坊主沢の下降はあまりしたくない。谷との出会いの橋で時折ぱらつく雨の中どうするかしばらく話し合う。行けるどこまで行って、岩が濡れるほど降ってきたら引き返すことにする。

 

重荷にあえぎながらガレた沢を登っていく。雨は何とかもってくれている。二つ坊主沢に入ると、傾斜も強くなり重荷では中々に神経を使う。どうにか登り切って、見覚えのある岸壁の基部へと再び舞い戻った。さぁ、雨が本降りになる前に一ピッチ登ってしまおう。

 

手早く準備を整えたら、バックロープをケツにつけ奥の危なげなチョックストーンに取り付く。見た目恐ろしいチョックストーンを乗り越えて、怪しげな岩の隙間にカムを打つ。上の立木にスリングを巻くまでは安心できない。立木に支点をとり左のレッジにトラバース。

レッジをトラバースしスタート地点へ

レッジから視線を上に向けると、記憶より遥かに美しい安山岩の垂壁が広がっていた。明瞭なクラックこそないが、程よく登れそうなラインが曇天に向かって伸びている。まるで宝物を見つけた気分だった。

 

BDとモチヅキのハーケンを打ち込み、ドリルを荷揚げし、ボルトを一本設置。折口を登らせたら、フィックスロープを張り、1ピッチ目のラインに目星をつけ、雨が本降りになる前に足早に下山した。

 

とにもかくにもスタートを切った。次はいよいよ本格的に登りだす。

 

雨の中万遍の笑みで1ピッチ目を見上げる

 

・・・第3話 「雨とマダニと1ピッチ」へつづく...