登攀チーム ひも野郎

傾山二つ坊主南壁を登るために集まった変わり者たちの記録

傾山 二ツ坊主南壁登攀 後半戦の記録  ~第7話 理想のライン~

第7話 理想のライン

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上部岸壁偵察 2022年11月17日 メンバー 片山

まだ前回の余韻も興奮冷めぬところだが、後半の計画が進まず、不安を抱く。というのも、上部壁の様子がわからないのだ。ブッシュ沿いに稜線へ抜けた際に上部右半分の岩壁を眺めたが、ブッシュが濃く、上の様子が良く見えない。かろうじて見えた壁は逆層厳しく、クラックは皆無。グランドアップで登るには非常に厳しそうに見えたのだ。

ビバークした洞窟の上を見上げる

 

それに壁全景の写真が無く、ブッシュがどのようにつながっているのか、二つ坊主ピークの直下はどうなっているのか、皆目見当もつかない。そこで一旦全景をしっかり把握しようと、一眼を片手に傾山へと向かった。

 

まず南坊主沢を詰めあがりつつ壁を探る。何とか3ピッチ目のボルトを視認することができたが、木々に遮られ、壁の一部しか見えない。もう少し上が見えないかと、ブッシュを頼りに、側壁を登ってみるが、近すぎて全体の様子はわからない。それに、側壁は浮石や枯木が多く、危険極まりない。一人でこんなところから落ちたら助からない。慎重に谷に戻り、そのまま傾山山頂へと向かう。

木々の隙間から3ピッチ目の一部が見えた

山頂から二つ坊主の壁は良く見えるが、いかんせん、角度が悪く、登攀ラインが微妙に影になってしまう。またおりからのガスに阻まれ、写真が取れない。仕方なく、せんげん尾根から下山し始めると、幸運にもガスが晴れてきた。傾山山頂と九折小屋のちょうど真ん中辺りから、どでかい2ツ坊主南壁を正面からとらえることができた。一眼の望遠を目いっぱい使って撮影すると、何とか前半のラインをとらえることができた。続けて、上部の主だった岩壁を手当たり次第に撮影して下山した。

山頂からはガスで望めず/せんげん尾根から全景を確認できた

写真を確認して分かったことは、ブッシュ帯は想像以上に広く、すっきりした壁は少ない。だが、相変わらず傾斜は強い。前半のラインはなかなかすっきりしたところをつないでおり、悪くない。

前回までのライン

全景がわかったことで、上部のラインがいくつか想定できた。一つは4ピッチ目途中から左にラインを変えて、ブッシュ帯を超えて、ピークの直下を目指すライン。もう一つは前回寝床にした岩屋の上の岩壁を直上するライン。こちらの方がブッシュを避けてすっきりしたカンテを長く登れそうであるが、逆層が厳しい。壁の形状からその二つが妥当に思えた。

 

上部岩壁の基部を偵察しに行きたいが、いかんせんアプローチが遠く、岩壁に回り込むのも難儀しそうだ。だが、できれば、上から懸垂で探るのだけは避けたい。上から見てしまうと、せっかくのグランドアップが台無しだ。やはり、下から解読していきたい。

ピークへ突き上げる岩は小さくボロそう / 洞窟上の岩はそれなりのサイズ

見えてきたライン

2022年12月~2023年2月

 上部壁基部の偵察を試み、12月と1月に橋本と傾山へ足を運んだが、雪に阻まれ、断念。2月は仕事と育児に追われ、傾どころかランニングもままならない。こんなことで登れるのか。焦りと不安が募る。

冬の間、壁は雪に閉ざされた


・・・第8話 「トップアウト」へつづく....