登攀チーム ひも野郎

傾山二つ坊主南壁を登るために集まった変わり者たちの記録

耳川水系 上の小屋谷 遡行 2日目 【国見岳山頂へ】

源流はどこまでも穏やかに

2日目。谷の底はまだ暗いが、空は徐々に明るみ始める。そそくさと朝食を済ませ、タープをたたみ、ビバーク地を後にする。ビバーク地はちょうど国見谷、長谷、山の池谷の分岐点。今日は真ん中の長谷から国見岳山頂を目指す。

長谷の入り口は小滝の連続。冷たい朝のシャワーを浴びて目を覚ます。いくつかの小滝を超え、2段8mの美滝を水線右より直登。ゴルジュ主体の昨日とは打って変わって、急速に高度を上げていく。すぐに30mはあろうかという大滝にぶつかる。中段までは滝の左が登れそうだが、落ち口は右か?しかしこの水量を浴びながらバンドをトラバースなどできるはずもない。妄想だけ楽しんで巻きにかかる。

左岸の広葉樹林の上に茶色の岸壁がチラリと覗く。若干気になるが、うまくいけば、右岸より小さく巻けそうだ。ズルズルの斜面にバイルを打ち込み、勢いよく登っていく。しかし、程なく立派な岩壁にぶち当たる。潔く諦め、今度はズルズルの斜面を慎重に下り、気を取り直して右岸より巻く。こちらは問題無く落ち口にでた。
 
この大滝を最後に谷の傾斜は緩み、徐々に穏やかな小川へと姿を変える。長い遡行もいよいよ終盤だ。日も高くなり、まだ若い広葉樹の葉の隙間から日差しが差し込む。細くなった水流が日差しを浴びてキラキラと輝く。どこまでも優しい流れに沿って20分ほど静かに歩けば、林道に出る。

ここで重い荷物をデポし、長谷登山口からサコッシュ一つで、国見岳山頂を目指す。山頂までは広く緩やかな稜線を歩く。時折現れるブナの巨木、シャクナゲの群生、ツキヨタケ。どこまでも飽きさせない。気が付けば山頂の祠は目の前だった。

山頂から東を望む。深い脊梁の山並みの間に、上の小屋谷がくっきりと刻まれている。この秀逸な谷を、両隣に立つ2人の素晴らしい仲間と踏破できた。そのことに、この上ない幸せを感じながら下山にかかった。

P.S.下山は林道から雷坂経由。心配した藪漕ぎもほとんどなく、駐車場直前まで快適に下ったが、最後の最後、真下に車を見るも崖に阻まれ、迂回。ブッシュを分け、何とか廃屋横の車道に飛び出す。汗まみれの体を耳川の水流で清め、大分への帰路につく。さぁ次はどこに行こうか!