登攀チーム ひも野郎

傾山二つ坊主南壁を登るために集まった変わり者たちの記録

耳川水系 上の小屋谷 遡行 1日目 【木漏れ日のゴルジュ】

明るく開放的 美しき上の小屋ゴルジュ

日本3大秘境、椎葉村にある上の小屋谷は、九州本土に3つある日本百名谷の一つだ。耳川水系の支流で、熊本県最高峰の国見岳に突き上げる谷である。遡行距離は約10㎞に及び、九州本土ではトップクラス。水量も多いが、大滝は少なく、ゴルジュも明るく美しい。岩はホールドが豊富でフリクションもいい。へつりや泳ぎを随所に交えながら、美しい渓相を楽しめる。

スタートは、廃屋横の荒れた登山道。藪に苦戦しながら進み、2つ目の堰堤上の川原で入渓。川原はすぐ狭まり、ゴルジュになる。最初の小滝、落差さは無いが、流れが速く落ちたくない。ここは、ホールド豊富な側壁をへつって超える。
 小滝を超え、川原の浅い場所を選びながら遡上。堰堤を2つ超えると釜のある3段4mの斜滝。2段目がトユになっており、激しく水流がぶつかる。水線は通過できないので、左を小さく巻く。

しばらく川原を歩き、林道の橋をくぐると川幅は再び狭まり、浅いゴルジュとなる。ゴルジュを抜けると、明るい川原と瀞。日差しを浴びてスカイブルーに輝く水の中をジャブジャブと進む。
 
スゲ谷の出合いを超え、美しい川原を歩く。徐々に巨石が増える。石伝いに連続する小滝を超える。ところどころ、ゴルジュ状の地形になるが、側壁は数メートル程で、日差しが差し込み渓相は明るい。
 
支流の出合いは落差のある滝がみられるが、水量の多い本谷は、小滝と釜、淵の連続である。木々の木漏れ日が明るく谷を照らし、美しい。浅いゴルジュをしばらく進むと釜を持つ2段5mの滝。水量が豊富で釜の流れは侮れない。左岸を巻く。3m、2条3mと小滝が続く。谷が右に大きく曲がったところで、釜を持つ立派な5m滝。これは左岸をへつり、水線際を気持ちよく通過できる。滝頭は磨かれ黒光りする粘板岩の間を急流が蛇行する。恐ろしくも美しい自然の造形美だ。

ゴルジュを抜けると広葉樹林と明るい川原。気持ち良く歩く。
 
しかしすぐに谷は狭まり再びゴルジュに。へつりを楽しみながら遡上すると、美しい釜を持つ2段4m滝。釜を泳ぎ、水線際の右岸を直上すると一旦ゴルジュを抜ける。が、すぐにまた浅いゴルジュ。狭まった側壁の間を階段状に流れる急流。水際に差し込む木漏れ日。その美しさには思わずため息がでた。

しばらくは小滝と釜が繰り返す。どの釜も水をたっぷりと湛え、木漏れ日にキラキラと輝く。美しい瀞と続く斜滝3mを左岸のスラブ沿いに超える。しばらく行くと、谷は大きく蛇行し、久しぶりに大きな滝が見えてくる。ここは、五勇山へと続く支流との2俣だ。2俣を過ぎると、しばらくは単調な歩きとなる。両岸からは幾筋も支流が滝となって流れ込む。水量はまだまだ豊富だ。いくつか釜をへつって超え、ゴルジュを通過する。

すると、ここまで小さな滝ばかりだった谷に、突如として幅広の15m大滝が現れる。水量に圧倒され、直登はあきらめる。巻きにも少々てこずる。

谷に戻り、小国見谷との出会いを超えると続いて幅広9m。これは水線の右側を直登。ホールドは豊富だ。

ゴツゴツしたゴルジュと巨石帯を過ぎる。「そろそろテン場を」と思った矢先、1日目最大の30m大滝が豪快に水を吐き出す。しばらく眺めるが落ち口の突破ができそうもないので、左岸の支流から巻いた。巻き終えれば、徐々に川原が広がり本日の行程は終了。

快適なビバーク地で星空を見上げ、冷えたビールとイワナ。これだから沢はたまらない。

~2日目 【国見岳山頂へ】 へつづく~

 
 
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