登攀チーム ひも野郎

傾山二つ坊主南壁を登るために集まった変わり者たちの記録

市房山山ノ口谷 遡行

市房山 山ノ口谷 遡行 2021年7月30日

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境谷の遡行を終えた後、カメラマンでスーパークライマーのYさんと合流し、続いて向かったのは、滝の数では九州随一とも言われる山の口谷。一ツ瀬川から市房山の山頂へ突き上げる傾斜の強い谷である。

 

一つ瀬川の右岸に渡り、民家の奥へ伸びる未舗装の林道を少し入ると山の口谷の入り口だ。林道脇に車を止め、谷へ降りる。

序盤は昨年の豪雨の影響なのか荒れており、倒木がうるさい。右へ左へと交わしながら無心に足を進める。思いの外長いガレ場にうんざりしていたその時、倒木の上から黒っぽい何かが、こちらを見下ろしていることに気がつく。良く見ると、優しい目と小さな尻尾が特徴的な何とも可愛いらしい犬ではないか!

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首輪をしているで、飼い犬のようだ。この辺りを一人で散歩しているのだろうか?

お邪魔しますと声をかけてそっと通り過ぎる。しばらくついて来ていたが、いつのまにか姿が見えなくなった。

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さて、谷の荒れ具合はようやく落ち着いてきて、徐々に傾斜が強くなってくる。
程なく10mほどの滝が現れたと思えば、そこからは怒涛のように滝が連続する。連続というより、連なった一連の滝と言った感じだ。傾斜もホールドと程よくあり、どれも気持ち良く水線際を登っていける。

 

急流とも滝とも言えそうな区間をしばらく進むと、谷は開け、眼前に100mはあろうかと言う巨大な滝が姿を表す。百間大滝だ。大きさも形状も素晴らしい。今日は登る装備も時間も無いが、しばらく観察して登攀ラインを探る。水量次第では何とかなりそうだ。いずれ、この滝だけを目的に来てみよう!

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ラインに目星をつけ、高巻くために右岸を観察する。すると、なんとそこに先ほどの黒犬がいるではないか!しかもついて来いといった素振りを見せ、我々に巻道を教えてくれたのだから驚いた。勝手に「山ノ口号」と命名し、ついていく。高巻き途中に見失ってしまったが、見事に大滝の上へ到達した。

 

大滝の上も滝は続く。いくつ目の滝か覚えていないが、15mほどの滝を登ろうとザイルの準備をしていたら、なんと山ノ口号が三度現れたのだ。もう中腹を超えた辺りだと言うのに!

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ザイルを結んでいる我々の後ろでカメラマンのYさんが、滝をバックに山ノ口号を撮影している。何ともシュールな状況に思わず笑ってしまった。

 

この滝を最後に彼はどこかへ行ってしまった。どうやら彼の散歩はここまでのようだ。

この後も我々は巻いたり登ったりしながらいくつもの滝を超えでいく。40mほどの大滝を2ピッチで登り終えると、徐々に谷は終盤の雰囲気がでてくる。

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ガレてきた現頭部は支流が入り組んでおり、少々複雑だった。まだ少し水は流れているが、さほど見どころも無さそうな雰囲気がでてきたところで、右の尾根へと登りあがり、一気に市房山山頂を目指す。

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山頂直下はこちらも草原となる。境谷のそれとは少し雰囲気が違うが、こちらも負けずに美しい。そこからひと登りで縦走路にでて、山頂へと至る。山頂の草原では鹿が美味しそうに草を食んでいる。まさに楽園と言った感じだ。

しばらく景色を楽しんで、快適な登山道から五合目登山口へと下山した。

 

 

PS.下山後、車を回収しに、入渓地点へ向かうと、入渓地手前の民家の入り口から見覚えのある犬がこちらに向かってくるではないか!
山ノ口号!君はここに住んでいたんだね!我々の帰りを待っていた訳では無いだろが、なんだか嬉しい。谷も素晴らしいかったが、今回の主役は完全に山ノ口号であった。

また、会いにくるね!

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そしてこの遡行を共にしてくれた素晴らしい2人の仲間には大感謝!
ありがとうございました!

 

※境谷でカメラのメモリがいっぱいになってしまい、以下の写真は2人が撮ってくれたものです。

素敵な写真をたくさん撮っていただき、本当にありがとうございます!